ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)とは
学名(属名) | Velociraptor |
名前の意味 | すばやい泥棒 velox(速い)[ラテン語]-raptor(泥棒)[ラテン語] |
分類 | 竜盤目・獣脚類(獣脚亜目・ドロマエオサウルス科) |
全長 | 約2m |
食性 | 肉食 |
生息時期 | 白亜紀後期 |
下分類・種名 | Velociraptor mongoliensis Velociraptor osmolskae |
論文記載年 | 1924 |
記載論文 | Three new Theropoda, Protoceratops zone, central Mongolia. American Museum Novitates. 144: 1–12. by Osborn, Henry F. 1924. |
特徴
ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)のアゴは細く、その構造から大きく開けることが出来たようです。

骨は軽量になっており、速く動くことができたと考えられています。推定では、時速60kmで走ることが可能だったとの試算があります。
ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)を世界的に有名にしたのは、1993年に公開された映画「ジュラシック・パーク」です。しかし、映画に登場する、人間よりも大きく、知能の高い「ラプトル」の姿は、実際にはヴェロキラプトルではなく、その近縁でより大型のデイノニクス (Deinonychus) がモデルになっています。
原作者のマイケル・クライトンは、当時デイノニクスをヴェロキラプトル属の一種とする学説(現在では否定されている)を採用しており、映画もそれに倣いました。実際のヴェロキラプトルは、七面鳥ほどの大きさしかない、小型の恐竜でした。

ドロマエオサウルス科の象徴である、後あしの大きな鉤爪は、かつては獲物を切り裂くための武器と考えられていました。しかし現在では、現代のタカやワシのように、獲物を鉤爪で地面に押さえつけ、翼のようにもなった前あしでバランスを取りながら、生きたまま食べたとする「猛禽類モデル(RPRモデル)」が有力視されています。
また、彼らは俊敏なハンターであったと同時に、スカベンジャー(腐肉食者)としての一面も持っていたようです。あるプロトケラトプスの化石には、ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)に食べられた後、他の肉食恐竜が食べ残した部分をあさった痕跡が残っていました。さらに、ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)の胃のあった場所からは、自分よりも大きな翼竜の骨が見つかった例もあり、彼らが非常に多様な食生活を送っていたことがうかがえます。

Feather Quill Knobs in the Dinosaur Velociraptor. Science - October 2007. by Alan H Turner, Peter J Makovicky, Mark A Norell.
2007年、ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)自身も前肢に羽毛を持っていた痕跡が見つかっています。"Feather Quill Knobs in the Dinosaur Velociraptor."と題した論文が、世界的な科学誌サイエンスScienceに掲載されました。
古生物学者のアラン・ターナー(Alan H. Turner)やマーク・ノレル(Mark A. Norell)はこの論文のなかで、「等間隔に並ぶ(quill knobsと呼ばれる)突起を備えた前肢の化石を発見しました。この突起は羽毛の付け根に観られる形で、ヴェロキラプトルが羽根をもっていたた証拠」と論じています。
2011年には、眼窩(眼球が入る窪み)と強膜輪(眼窩にある輪状の骨)の相対的な大きさから、ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)は夜行性であったことを示唆する論文が発表されました。


ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)とプロトケラトプスの格闘化石

1971年に発掘された標本番号GIN 100/25
ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)には面白い化石も発見されています。1971年に中央アジア・ゴビ砂漠で発掘された"格闘化石"と呼ばれる標本(標本番号GIN 100/25)です。前脚をプロトケラトプスに噛まれた状態で保存されていました。ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)の後脚は、プロトケラトプスのお腹を蹴っています。
このような状態で化石化した経緯はわかりませんが、どのような状況でこのような化石になったのか想像力をかき立てられる興味深い標本となっています。
原標本はアメリカ自然史博物館所蔵(所有権はモンゴル政府に帰属)となっていますが、日本国内では群馬県・神流町恐竜センターでレプリカ標本を観ることができます(2017年時点)。
発見と論文記載

出典:Three new Theropoda, Protoceratops zone, central Mongolia. American Museum Novitates. 144. by Osborn, Henry F. 1924.
1923年8月、アメリカ自然史博物館が行ったモンゴル・ゴビ砂漠での発掘調査で、ピーター・カイゼン(Peter Kaisen)はかぎ爪と頭骨の化石を発掘しました。
1924年、自然史博物館の館長だったヘンリー・オズボーン(Henry Fairfield Osborn)は、かぎ爪と頭骨の化石(標本番号AMNH 6515)をタイプ標本として、新属新種ヴェロキラプトル・モンゴリエンシス(Velociraptor mongoliensis)を記載します。
米ソの冷戦時代(1946年-1989年) 共産主義国のモンゴルをアメリカの調査隊が訪れることはできませんでした。その間にソビエト連邦とポーランドの科学者たちが、モンゴルでヴェロキラプトルの標本をいくつか発掘しました(先述のプロトケラトプスとの格闘化石もこの時期に発掘されました)。
冷戦が終わりを迎えつつあった1990年、アメリカ自然史博物館とモンゴル科学アカデミーが合同で発掘調査を行い、さらに保存状態の良い化石を発見しています。例えば、標本番号IGM 100/980は頭骨が欠けているものの、その他の部位はほぼ完全な状態で残されていました。
ヴェロキラプトル(ベロキラプトル)の切手・化石ギャラリー


