パラサウロロフス

パラサウロロフス

Parasaurolophus

パラサウロロフスとは

学名(属名) Parasaurolophus
名前の意味 サウロロフス(トカゲのトサカ)に近いトカゲ
para(近い、似た)[ギリシャ語]-sauros(トカゲ)[ギリシャ語]-lophos(トサカ)[ギリシャ語]
分類 鳥盤目・鳥脚類 (鳥脚亜目・ハドロサウルス科・ランベオサウルス亜科)
全長 約9.5 - 10m (推定体重 約2.5 - 5トン)
食性 植物食
生息時期 白亜紀後期(カンパニアン期:約7,650万年〜7,300万年前)
下分類・種名 Parasaurolophus walkeri
Parasaurolophus tubicen
Parasaurolophus cyrtocristatus
論文記載年 1922
属名の記載論文 Parasaurolophus walkeri, a new genus and species of trachodont dinosaur.
University of Toronto Studies: Geological Series. 13
by William A. Parks. 1922.

パラサウロロフスの特徴

パラサウロロフスの切手

パラサウロロフスは、白亜紀後期の北米(ララミディア大陸)に生息した大型の鳥脚類です。
属名は「サウロロフス(トカゲのトサカ)に近いトカゲ」を意味しますが、サウロロフス(ハドロサウルス亜科、またはサウロロフス亜科)とは別の亜科(ランベオサウルス亜科)に分類されており、姿が似ているのは進化の過程で偶然似たため(収斂進化)と考えられています。

パラサウロロフスの最大の特徴は、頭部から後方へ長く伸びる、中空の管状のトサカ(クレスト)です。このトサカの役割については、長年謎に包まれており、かつては「水中で呼吸するためのシュノーケル」や「空気溜め」、「脳の冷却装置(体温調節)」など、様々な仮説が提唱されてきました。
しかし、現在では「視覚的なディスプレイ(仲間を見分けるシンボル)」と「音響共鳴チャンバー(発声器官)」の二重の機能を果たしていたとする説が広く支持されています。

トサカから出る低周波音
保存状態の良い頭骨のCTスキャンを用いたデジタル音響シミュレーションにより、この複雑な気道構造を持つトサカは、巨大なトロンボーンのように、低い周波数の音(低周波音)を発することがわかりました。低周波音は障害物があっても遠くまで届きやすいため、森林の中で仲間とコミュニケーションをとったり、危険を知らせたりするのに適していました。また、彼らの内耳も低周波音を聞き取ることに特化した構造になっていたのです。

また、パラサウロロフスの口には「デンタルバッテリー」と呼ばれる数百本の歯が隙間なく密集した強力な咀嚼器官がありました。近年の微小摩耗(歯の傷)の分析から、パラサウロロフスは哺乳類のように下顎をわずかに回転させながら前後に動かす、複雑な咀嚼運動を行っていたことがわかっています。これにより、当時の硬い植物も効率よくすり潰すことができました。

歩行については、普段ゆっくり移動したり植物を食べる時は四足歩行でしたが、肉食恐竜から逃げるなど速く移動する時には二足歩行に切り替えて走っていたと考えられています。背中から尾にかけては「骨化腱」が網目状に交差しており、これが尾をまっすぐに保つことで、大きな体を走らせるための強力なエンジンとして機能していました。

皮膚については、部分的な印象化石が見つかっており、ドングリ状の隆起を持たない、均一な結節状の丸いウロコで覆われていたことがわかっています。

パラサウロロフスの化石
全身骨格化石(2011年撮影)

パラサウロロフスの赤ちゃん

2009年、アメリカ・ユタ州のカイパロウィッツ層で、「Baby Joe(ベビージョー)」という愛称で呼ばれるパラサウロロフスの幼体化石が発見され、2013年に論文で報告されました。標本番号RAM 14000としてカタログ化されたこの幼体は全長約2.5m(大人の約25%の大きさ)で、骨組織の分析から1歳に満たない急成長期にあったことがわかっています。

トサカは、大人のように長い管状ではなく、低く半円状の形をしていました。特筆すべきは、他の近縁な恐竜が体の大きさが大人の半分ほどになるまでトサカを発達させないのに対し、この幼体は成体のわずか25%未満の小さな段階ですでにトサカと内部の気道の形成を始めていました。これは、パラサウロロフスの生存において「声によるコミュニケーション」が幼生期から非常に不可欠であったことを物語っています。

パラサウロロフス幼体の頭骨化石
パラサウロロフス幼体(Baby Joe)の頭骨化石(2016年撮影)
実物化石が、2016年国立科学博物館で開催された[恐竜博2016]で展示されました。
パラサウロロフス成体の頭骨化石
パラサウロロフス成体の頭骨化石(2016年撮影)

発見と論文記載

1920年、カナダ・トロント大学が行っていた白亜紀後期の地層-アルバータ州レッドディア河(Red Deer River)沿いのダイナソーパーク層での野外学習中に、特徴的な頭骨を含む部分骨格を発見します。

パラサウロロフスの記載論文(1922年)
パラサウロロフスの記載論文抜粋-頭骨スケッチ(1922年)
出典:Parasaurolophus walkeri, a new genus and species of trachodont dinosaur.
University of Toronto Studies: Geological Series. 13
by William A. Parks. 1922.

1922年、この時に発見された化石群(標本番号ROM 768)に基づいて、トロント大学の古生物学者ウィリアム・パークス(William A. Parks)は新属新種パラサウロロフス(Parasaurolophus walkeri)を記載します。 種名の"walkeri"は、トロント大学などで文化教育事業の発展に貢献したバイロン・ウォーカー(Byron Edmund Walker)に敬意を表してつけられました。

パラサウロロフス属は、現在3種が有効とされています。
2つ目の種は、アメリカ・ニューメキシコ州のカートランド層から発見され、1931年にカール・ウィマン(Carl Wiman)によってParasaurolophus tubicenとして記載されました。この種はトサカの内部気道が複雑に迷路状に分岐しているのが特徴です。
3つ目の種は、1961年にジョン・オストロム(John Ostrom)が記載したParasaurolophus cyrtocristatusです。トサカが短く急激に下へ湾曲していることから、長らく「他の種のメスや若い個体ではないか」という性的二形の仮説が議論されてきました。しかし近年の研究により、頭骨に独自の特徴があることや、生息していた地層の年代が異なる(下位の古い地層から産出する)ことなどが明らかになり、独立した有効な種であると考えられています。

驚異的な生命力と、否定された「皮膜」仮説
最初に発見されたパラサウロロフスの化石(標本番号ROM 768)を詳しく調べたところ、この個体は生きている間に、倒木が胸部に直撃するような重傷(肋骨や骨盤の骨折など)を負っていたにもかかわらず、その後も数ヶ月から数年にわたり生き延びていたことが判明しました。
また、この個体の首や背中の骨から、首を支える巨大な靭帯(項靭帯)が強靭に発達していたことがわかっています。かつては「トサカの先端から背中にかけて皮膚の膜(フリル)が張っていた」という仮説に基づいた想像図が描かれることもありましたが、この頑丈な首の構造や、首が自由に動かせなくなるという理由から、現在では「皮膜仮説」は否定されています。

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