2020年の恐竜ニュース
食料が少ない時期には成長を遅らせたティラノサウルス
2020.01.07
未成熟なティラノサウルス類の骨の断面を詳細に調べた結果が、学術誌Scienve Advancesに掲載されました。
この研究のなかで、2個体の脚の化石から断面を薄く取得し細部を観察しました。
血管の跡からどれだけの血液が栄養を運んでいたか、骨の成長速度が推測できます。
また骨の断面には成長線と呼ばれる毎年の成長度合いも残されます。
温暖な季節と冬の成長速度が違うことから生じる年輪です。若い個体は2体調査したところ、
個体によっても成長度合いが異なっていることがわかりました。
この論文の中で、「ティラノサウルスは、食料の少ない時期には餓死するのではなく、成長を遅らせることで生き延びることができた」ことを示唆しています。
ティラノサウルス類の新種を発見、名前は「死神」 | カナダ
2020.02.20
2010年カナダのアルバータ州南部で発見された化石が、ティラノサウルス類の新種であったことがわかりました。 カナダのロイヤル・ティレル博物館に保管されてから10年近く経って、入念な調査の結果の論文掲載となりました。 2018年にアルバータ州の別の場所から、顎の小さな破片も見つかっています。
体長約8mと推定されたこの恐竜は、"タナトテリステス・デグロートルム(Thanatotheristes degrootorum)"と名づけられました。 ギリシア神話に登場する死神タナトスに由来しています。
タナトテリステスは、ティラノサウルス類が生態系の頂点を目指し始めた頃-約7950万年前に生息していました。 頭骨の一部でしか化石は発掘されておらず、詳細なタナトテリステスの生態を知るためには更なる調査・発見が待たれます。
天草(熊本県)で見つかった竜脚類の肋骨化石
2020.02.29
熊本県天草市・御所浦島の白亜紀前期(約1億年前)の地層から1999年に発見された肋骨化石は、大型植物食恐竜-竜脚類のものであることがわかりました。 当初は鳥脚類のものとして熊本県-白亜紀資料館に展示されていましたが、2013年から調査・クリーニングを進めたところ竜脚類のものであることが判明したのです。 肋骨化石は長さ42cm、幅18cm、厚さ0.9cmのもの。種は特定できていませんが、全長15mと推定されています。
九州では、北九州市の約1億3000万年前、天草市下島と鹿児島県薩摩川内市の約8000万年前の地層から竜脚類の化石が見つかっています。 今回の発見は、この間を埋めるものです。
新種の恐竜卵 55年前の化石 山口県
2020.03.16
1965年9月山口県下関市で採取された化石が、新種の恐竜卵であることがわかりました。
白亜紀前期(約1億2000万年-1億年前)の地層-関門層群下関亜層群上部で、当時高校生が採取していました。 卵の破片が12点あり、厚さは3.7mm。卵の直径は10cmほどと推定されています。 中国浙江省や韓国西武京畿道華城市でも似た卵の化石が発見されており、東アジアの広い地域に同種の恐竜が生息していたことを示唆しています。
卵の主、産んだ恐竜は特定されていませんが、卵殻内の裂け目状の空洞があり、中国産のものと比較して卵殻が厚いことから新種と判断しました。
「下関の多裂卵石」という意味の「ムルティフィスウーリトゥス・シモノセキエンシス」との学名が与えられました。
卵化石は2019年12月に下関市へ寄贈されています(市立考古博物館で所蔵されるそうです)。
エドモントサウルスとウグルナールクは同属。寒冷な北極圏に適応
2020.05.12
白亜紀末(約6900万年前)北緯53-40度の北米に生息していたエドモントサウルス(Edmontosaurus)と、 北極圏のアラスカ州北部に生息していたウグルナールク(Ugrunaaluk)を同一属とする研究結果が示されました。
ウグルナールクが生息していた同地域(白亜紀末当時-北緯80度)の平均気温は6.2℃と推定され、冬には雪に閉ざされる場所であったと考えられています。 ウグルナールクが新種として記載された2015年当初から、一部の研究者からはハドロサウルス類-エドモントサウルスとの近似が指摘されていました。 しかしいくつかの類似しない特徴から新種として記載されていましたのですが、 改めて北海道大学などのチームによる比較研究で、「エドモントサウルスとウグルナールクが同一属であった」と結論づけました。
今回の発表で、エドモントサウルスが北極圏の厳しい環境に適応し生息域を広げていたことを示唆しています。
孵化前のティラノサウルス類 発見
2020.10.25
1983年アメリカ・モンタナ州ツーメディスン累層で見つかった顎の化石。2018年カナダ・アルバータ州ホースシューキャニオン累層でみつかった足の爪化石。 発見された当初、これらの化石の重要性は認知されていなかったそうです。
大学院生が足の爪化石を研究中、指導教官から小さな顎の化石を見せられました。 3Dスキャンと復元作業によって、「足の爪も顎も、これらがティラノサウルス類のものである」ことをつきとめました。
顎化石から推定されるティラノサウルス類の全長は約90cm。孵化直前の胎児と考えられています。
すでに鋭く小さな歯が並んでいました。
この発見はこのティラノサウルス類の赤ちゃんの全長を示唆するだけでなく、卵の大きさも推定されます。
ティラノサウルス類の卵の大きさは40cm。
今回の発見は、もっと多くのティラノサウルス類の卵や孵化したての幼体を探す手がかりになるといいます。