メソリムルス(カブトガニ)

メソリムルス

Mesolimus

メソリムルス(カブトガニ)とは

学名(属名) Mesolimus
名前の意味 中間のカブトガニ
meso(中間の)[ギリシャ語]-Limulus(カブトガニ属の学名)
分類 鋏角亜門-節口綱-カブトガニ(剣尾)目-カブトガニ科
生息時期 ジュラ紀後期(約1億5080万年前-約1億4550万年前)
下分類・種名 Mesolimulus walchi
論文記載年 1822

特徴:「生きた化石」の完成されたデザイン

メソリムルスは、ジュラ紀後期の浅い海に生息した、カブトガニの仲間です。その体は、数億年もの間ほとんど姿を変えずに現代まで続く、「完成されたデザイン」を持っていました。

体の仕組みと生態

メソリムルス(カブトガニ)と這い痕 化石
メソリムルス(カブトガニ)の化石 - Mesolimus(2019年撮影)
ゾルンホーフェン博物館 - ブルガーマイスター・ミュラー博物館(Museum-Solnhofen | Bürgermeist-Müller-Museum,Germany.)

名前に反してカニの仲間(甲殻類)ではなく、クモやサソリに近い「鋏角亜門」に属します。彼らは海底を歩き回り、ゴカイのような小さな生物を捕食する、底生(ベントス)の生き物でした。

身体の前部は丸い盾状になっており、後部は台形に近づいて、尾部は細長く尖った剣尾になります。

  • 腹鰓(ふくさい):お腹側には「本のページ」のようなヒダが重なった、ユニークなエラ(書鰓)があり、水中で呼吸していました。
  • 剣尾(けんび):長く鋭い尻尾は武器ではなく、ひっくり返った際に、テコの原理で体を元に戻すための重要な道具でした。

彼らが「生きた化石」と呼ばれるのは、この非常に効率的で、様々な環境に適応できる体のデザインを、ジュラ紀の時点ですでに完成させていたからです。

ゾルンホーフェンの「死の罠」と死の行進

メソリムルス(カブトガニ)と死の行進 化石
這い痕が残るメソリムルス(カブトガニ)の化石 - Mesolimus(2019年撮影)
ゾルンホーフェン博物館 - ブルガーマイスター・ミュラー博物館(Museum-Solnhofen | Bürgermeist-Müller-Museum,Germany.)

ドイツのゾルンホーフェン石灰岩は、始祖鳥をはじめ、生物の軟組織や活動の痕跡までが驚異的に保存されることで有名な化石産地です。メソリムルスの化石の多くもここから発見されており、特に有名なのが、本体とその最後の足跡が一緒に残された「死の行進」の化石(Mortichnia:死の痕跡)です。

ジュラ紀後期のゾルンホーフェンは、外海と隔てられた、塩分濃度が非常に高く、海底付近は無酸素状態のラグーン(潟)でした。普段、生物はほとんど生息できない「死の海」だったのです。

おそらく、外海に生息していたメソリムルスが、嵐などによってこの毒のラグーンに流されてしまったのでしょう。彼らは、最後の力を振り絞って酸素のある場所へ逃げようと海底を歩き回りますが、やがて力尽きてしまいます。無酸素の環境だったために、その死骸は分解されることなく、最後の悲痛な足跡と共に、完璧な姿で化石として残されたのです。

メソリムルスの切手・化石ギャラリー