イグアノドン
図鑑 / 恐竜のしっぽ
イグアノドンとは
学名(属名) | Iguanodon |
名前の意味 | イグアナの歯 iguana(イグアナ)[スペイン語]-odōn(歯)[ギリシャ語] |
分類 | 鳥盤目・鳥脚類 (鳥脚亜目・イグアノドン上科) |
全長 | 約6 - 10m |
食性 | 植物食 |
生息時期 | 白亜紀前期 |
下分類・種名 | Iguanodon anglicus Iguanodon bernissartensis Iguanodon atherfieldensis Iguanodon dawsoni |
論文記載年 | 1825 |
属名の記載論文 | Notice on the Iguanodon, a newly discovered fossil reptile, from the sandstone of Tilgate forest, in Sussex. Philosophical Transactions of the Royal Society. 115 by Mantell, Gideon A. 1825. |
特徴
イグアノドンの特徴は、前足の大きな第一指(親指)です。
長さ15cmの先が尖った親指は、発見当初は"角"と間違えられたほどでした。
かつて肉食恐竜からの防御のための武器と考えられたこともありますが、この親指をどのようにして使ったのかはわかっていません。 前肢が短くて親指の爪が役にたつほど肉食恐竜に接近された場合、噛みつかれているかもしれません。 2007年に刊行された書籍のなかでトーマス・R・ホルツJr.は、「同種のなわばり争いや、食べるために木の実を開ける役割をもっていた可能性」を示唆しています。
全長約6-10m、体重4-5tと推定されています。通常は4足歩行で、走る時には2足歩行をしていたと考えられています。
口には数百本の歯が並んでおり、植物を効率よく磨り潰すことができました。
イグアノドンの生息地
イグアノドンの化石は、ヨーロッパ、アジア、北アメリカの広い範囲で見つかっています。
1878年、ベルギーのベルニサール炭鉱から30体以上の全身骨格が見つかっています。
白亜紀前期のベルニサール付近は川が大きな湖に流れ込む場所で、長い時間をかけて何度も上流から死骸・骨が流れついた結果だと考えられています。
イグアノドンは、広い範囲で個体数の多い属だったようです。
ベルニサール炭鉱での発掘作業は1881年に中止されました。このときにもまだ、他のイグアノドン個体が埋まっている可能性が高かったようです。
第一次世界大戦でドイツ軍が当地を占領した際、古生物学研究のために発掘が計画されましたが実現せず、
ベルギーが鉱山を取り戻した後にも、財政上の問題から発掘が再開されることはありませんでした。
1921年に鉱山が氾濫して、完全に閉山されています。同地にはまだ、イグアノドンが埋まっていることでしょう。
初めて研究された恐竜
イグアノドンの化石が発見されたのは、恐竜(Dinosauria)という言葉もなかった1821年のことです。
イギリスの田舎で医者をしていたギデオン・マンテル(Mantell, Gideon A.)が、大きな歯の化石を発見しました(その妻が発見した説もあります)。
マンテルは相当な古生物好きで、本業(医師)をしながら化石の収集にもよく出かけたそうです。
この日も診察の帰りに工事で掘り返された道路を観察しながら歩いていたところ、巨大な歯に出逢ったのです。
有名な博物学者や 後の大英自然史博物館の館長となるオーウェンでさえ「哺乳類の歯」と判断しましたが マンテルは調査を続け、
新しい種の爬虫類であることが認められます。
1825年マンテルは、自身が発見した歯の持ち主(中生代の巨大爬虫類)に「イグアノドン (イグアナの歯 の意味)」の名称を与えました(*1)。
1834年、イギリス南東部ケント郡のGreensand Formationから状態の良いイグアノドンの化石が発掘されました。 この化石に基づいてイグアノドンの生きていた姿が復元されましたが、誤って、尖った第一指を鼻の上に角として造形されています。
(*1)
初めて学術的に研究された恐竜はイグアノドンですが、初めに命名されたのはメガロサウルスです。
イグアノドンが学会で論文発表される1年前1824年に、「メガロサウルス (大きなトカゲ) の意味)」が命名されています。
1841年(イグアノドンが記載された16年後)、それまでに発見されていた3種類の巨大爬虫類(イグアノドン、メガロサウルス、ヘラエオサウルス)を総称して、
当時の大英博物館初代館長だった古生物学-比較分類学の権威リチャード・オーウェンによって「恐竜(Dinosauria)」という言葉が使われました。