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デンタルバッテリー(予備の歯)

Dental (Tooth) Battery

デンタルバッテリーとは?

人間の歯は、永久歯が抜けると二度と生えてきません。しかし、一部の植物食恐竜は、硬い植物を食べることで摩耗する歯に備え、顎の中に無数の予備の歯を持っていました。歯がすり減る頃には、次の歯が下から押し上げるようにして生え変わり、これが生涯続いたと考えられています。

このように、多数の歯が密集し、絶えず交換される巧妙な仕組みを「デンタルバッテリー」と呼びます。デンタルバッテリーを持つ恐竜では、一つ一つの歯は比較的小さく、顎に対しての歯の数が非常に多くなる傾向があります。

サウロロフスのデンタルバッテリー
鳥脚類-サウロロフスのデンタルバッテリー(下顎)

食性に合わせた多様な構造

デンタルバッテリーは、恐竜のグループによって構造や機能が異なり、それぞれの食性へ巧みに適応していました。

ハドロサウルス類(カモノハシ恐竜) - 「すり潰す」歯

エドモントサウルスのデンタルバッテリー
鳥脚類-エドモントサウルスのデンタルバッテリー

鳥脚類に属するアナトティタン(約2000本)、エドモントサウルス(約1000本)、コリトサウルス(約600本)などは、多数の小さな歯が密集し、顎全体で一つの巨大な「すり潰し面」を形成していました。硬さの違う組織(エナメル質・象牙質など)でできた歯が不均一にすり減ることで、おろし金のように常に鋭い状態が保たれ、下顎を前後に動かして効率的に植物をすり潰していました。

ケラトプス類(角竜) - 「断ち切る」歯

周飾頭類-トリケラトプスのデンタルバッテリー
周飾頭類-角竜-トリケラトプスのデンタルバッテリー

トリケラトプスなどの角竜もデンタルバッテリーを持っていましたが、その機能は異なりました。彼らの歯は一つ一つが大きく、鋭い縁を持っていました。顎を上下に動かし、この鋭い歯をハサミのように使って、ヤシのような硬い繊維質の植物を断ち切る(シアー機能)ように食べていたと考えられています。

このほか、竜脚類のニジェールサウルスなどもデンタルバッテリー構造を備えていました。

竜脚類-ニジェールサウルスのデンタルバッテリー(下顎)
竜脚類-ニジェールサウルスのデンタルバッテリー(下顎)

肉食恐竜との比較

ティラノサウルスのような肉食恐竜も、生涯を通じて歯が何度も生え変わりました。しかし、それはデンタルバッテリーとは異なります。

彼らの歯は一本一本が独立しており、獲物を突き刺し、骨を砕くために特化していました。歯は交互に一定の規則性をもって生え変わり、歯槽の中には交換用の歯が1~2本控えていました。これは、常に強力な牙を維持するための仕組みですが、植物食恐竜のように「面」で機能するデンタルバッテリーとは、その構造も目的も大きく異なっています。