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恐竜は何を食べた

Feeding habits of dinosaurs

食性を特定する「決定的証拠」

恐竜が何を食べていたか(食性)は、主に歯の形で推定されます。肉を切り裂くのに適したナイフのような歯を持つものは肉食、植物をすり潰したり切ったりするのに適した平たい歯を持つものは植物食、といった具合です。しかし、それ以外にも食性を特定するいくつかの「決定的証拠」が見つかっています。

肉食恐竜(ギガノトサウルス)の歯
肉食恐竜の歯
ギガノトサウルス(獣脚類)
植物食恐竜(プラテオサウルス)の歯
植物食恐竜の歯
プラテオサウルス(古竜脚類)
  • 胃の内容物の化石: 恐竜の腹部から、最後に食べたものが未消化のまま見つかることがあります。これは最も直接的な証拠で、例えばスピノサウルス科のバリオニクスの腹部からは魚のウロコの化石が見つかり、魚食性であったことが確定しました。
  • 糞の化石(コプロライト): 糞の化石を分析することで、食べていたものを特定できます。ティラノサウルスのものとされる巨大な糞の化石からは砕かれた骨の破片が見つかっており、骨ごと獲物を食べていたことが分かります。
  • 歯のミクロな傷(マイクロウェア): 歯の表面に残された目に見えないほどの小さな傷を分析し、硬いものや柔らかいものなど、何を食べていたかを推定する研究も進んでいます。

植物食恐竜

ディプロドクスなどの[竜脚形類]、イグアノドンなどの[鳥脚類]、トリケラトプスなどの[周飾頭類]、 ステゴサウルスなどの[装盾類]は、すべて植物食恐竜です。

三畳紀・ジュラ紀の陸上植物は、シダ植物や針葉樹などの裸子植物が主でした。これらは栄養価が低く、巨大な体を維持するためには大量に食べる必要がありました。特にジュラ紀に大型化した竜脚類は、食べることに多くの時間を費やしたと考えられています。

ジュラ紀の裸子植物(マツ)の球果
ジュラ紀の裸子植物(マツ)の球果

竜脚類など一部の植物食恐竜は、消化を助けるために石を飲み込む習性がありました。口ですり潰さず、胃の中の石で植物を砕いていたのです。この石は「胃石(いせき、ガストロリス)」と呼ばれ、現代の鳥類も同様の行動をとります。

白亜紀に入ると、より栄養価の高い被子植物が登場し、角竜や鳥脚類などの繁栄に貢献しました。

白亜紀の被子植物の葉
白亜紀の被子植物の葉

また2017年には、ハドロサウルス類の糞の化石から、腐った木の他に甲殻類(エビなどの仲間)の殻が見つかりました。産卵期などに栄養を補うため、意図的に食べていた可能性が考えられています。

肉食恐竜と魚食恐竜

今まで見つかっている肉食恐竜は、そのほとんどが[獣脚類]です。三畳紀には昆虫や小動物を、ジュラ紀以降は大型化に伴い植物食恐竜を襲うものが現れました。

弱肉強食(恐竜)
弱肉強食

肉食恐竜の中には、特に魚食に適応したグループもいました。スピノサウルスやバリオニクスに代表されるスピノサウルス科は、ワニのように細長い顎と、滑りやすい魚を捕らえるための円錐形の鋭い歯を持っていました。彼らの歯には肉を切り裂くギザギザ(セレーション)がなく、獲物を突き刺して逃さない構造になっていました。

雑食恐竜

オヴィラプトル(雑食)の頭骨
雑食恐竜の頭骨
オヴィラプトル(獣脚類)

獣脚類の一部には、オヴィラプトルやガリミムスのように、歯が退化して堅いクチバシを持つ恐竜がいます。彼らは植物、昆虫、卵、小動物など、様々なものを食べる雑食性だったと考えられています。

食性についての議論

2010年、「獣脚類 - テタヌラ類 - コエルロサウルス類の多くは、元々植物食であった」とする研究成果が米シカゴ・フィールド博物館の研究チームから提出されました。このグループにはティラノサウルスなども含まれますが、研究チームは「このグループの中の"肉食"はむしろ例外的かも知れない」とコメントしており、恐竜の食性については今も研究が続いています。