スキフォクリニテス(ウミユリ)

スキフォクリニテス

Scyphocrinites

スキフォクリニテス(ウミユリ)とは

学名(属名) Scyphocrinites
名前の意味 杯(さかずき)のユリ
skyphos(杯)[ギリシャ語]-crinon(ユリ)[ギリシャ語]
分類 ウミユリ綱-モノバラス目-スキフォクリニテス科
生息時期 シルル紀末期-デボン紀前期(約4億1600万年-4億1200万年前)
下分類・種名 Scyphocrinites elegans
論文記載年 1833

特徴:進化する科学的解釈

スキフォクリニテスは、その奇妙な姿と化石の産状から、その生態をめぐって100年以上にわたり科学的な議論が続いている、非常に興味深いウミユリです。シルル紀末期-デボン紀前期(約4億1600万年-4億1200万年前)に生息していました。

ウミユリ(海百合)は名前に反して植物ではなく、ヒトデやウニの仲間 - 棘皮動物門に属する動物です。現在では深海に棲んでいますが、古生代に最も栄え浅海にも生息していました。 根や茎に見える部分・支持体と花びらのように見える腕(触手)をもちます。

生態に関する大論争:「浮いていた」のか「根付いていた」のか?

スキフォクリニテス・エレガンスの化石
スキフォクリニテス・エレガンスの化石-Scyphocrinites elegans
モロッコ産・デボン紀(約4億1000万年前)
マイクレクション
  • 浮遊生活説(伝統的な説):長年、化石でよく見つかる球根状の器官「ロボリス(lobolith)」は、内部にガスを溜めて海面を漂うための「浮き袋」であったと考えられてきました。この説では、スキフォクリニテスは海面から花のような体を垂らし、プランクトンを濾しとって食べていたとされます。
  • 海底固着説(最新の有力説):しかし近年の研究では、このロボリスは浮くには密度が高すぎることが指摘されています。代わりに、これは海底の柔らかい泥の中に体を固定するための**「錨(いかり)」**のような役割を果たしていた、という説が提唱されています。この説では、彼らは海底に体を固定し、長い茎を伸ばして、より効率的に海中のプランクトンを捕食していたと考えられています。

どちらの説が正しいのか、現在も活発な議論が続いています。

スキフォクリニテスの腕の間
スキフォクリニテスの腕の間
マイクレクション

腕の間にはフィルターのような細かい枝が並びます。 北アフリカ(モロッコ)から良質な化石が産出することで有名ですが、ヨーロッパ、アジア、北アメリカなど広範囲で見つかっています。

化石が語る「死の物語」

モロッコなどでは、スキフォクリニテスが巨大なプレート状の化石として、数えきれないほどの個体が密集して発見されます。これは、嵐などの自然災害によって、彼らのコロニー(群生地)が根こそぎにされ、酸素の少ない海底の深みへと一気に流されて堆積した結果だと考えられています。酸素が少ない環境だったために、死骸は他の生物に食べられることなく、奇跡的に美しい姿のまま化石として残されたのです。

スキフォクリニテスの切手・化石ギャラリー